萌語り:ハデ始

◆リプレイ暴走
(ハデ始)

ミラータッチ共感覚の症状がリプレイ暴走した始皇帝とか。
過去に刻まれた傷が絶え間なく体に浮かび、熱と痛みにうなされ。
ハデスが心配そうにするので、無問題と笑いながら返してやろうとして。
無理をするなと優しく頬を撫でられ、涙腺が崩壊するとか。

本当はとても痛い。身体中が痛くて痛くてたまらない。
抱きしめて欲しい、守って欲しい、もう痛いのは嫌だ。
どうして、僕だけが背負わなければいけないのか。
目を閉じても笑っていても傷が増えていく。

王としてではなく人として涙を零す始皇帝を抱き上げるハデスとか。
身体中がズキズキと痛むが神様の腕の中は安心できる場所で。
聞こえてくる相手の心臓の音は一定で、とても穏やかで。
暴走しきっていた症状も徐々に治まり始め。
そのまま眠りにつく始皇帝とか。

不自由な体質だと、眠ってしまった人の子に対しハデスは呟く。
それでも王として投げ出すことなく全てを背負い続ける姿は。
痛ましいほどに美しく――愛おしい。


(2022/03/28)
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