萌語り:ハデ始

◆春への訪れ
(ハデ始)

春燕に会いに、ハデスと一緒に行く始皇帝とか。

一度、春燕に会おうとして実の母子の様子に背を向けた事がある始皇帝が。
また実の母子の声が聞こえてくるのではと、無意識に後ずさろうとしたら。
ハデスがいるため後退はかなわず、支えるように添えられた手に背を押され。
僅かばかりの逡巡に足を止め、再び前へと歩もうとした矢先。
自分の名を呼ぶ、春燕の声が聞こえてくる。

みたいな感じで。
ハデスの付き添いにより、ようやく春燕と再会する始皇帝とか。
会ってしまえば、そこにわだかまりなど何もなく。
春燕の前では人の王としてではなく、ただ一人の子どもに戻るとか。

なお、その後。
ところで後ろにいるのは何?とハデスの事を春燕は始皇帝に問う。
ラグナロクで政が戦った神様なのは知っているが、それがどうして此処にいるのかと。
まあまあ不審げな視線を向けてくる春燕へと、しれっと挨拶をする冥界の王。
始皇帝と付き合っていることを暴露する容赦のない神様。
むしろ始皇帝の育ての母へと挨拶しに来ただけ。

驚愕の声をあげる春燕。
政の方を見れば、明らかに事実であることは明白で。
我慢ならなくなった始皇帝は、ハデスへと詰め寄りその胸ぐらを掴み上げ。
単なる付き添いではなかったのか!話が違うぞ!とばかりに怒る。

「冥界の王よ!そなたは朕を辱める気か!!」
「何を怒る?人の王よ、余は貴様の母に挨拶をしただけだ」
「不好!声が面白がっているぞ、ハデス!」

庭先にて冥界の王と人の王による大人気なさすぎる口論が始まり。
呆気にとられながらも、まあ、政の様子を見るに無問題かと思う春燕とか。


(2022/03/01)
40/56ページ