萌語り:ハデ始

◆スイカ割り大会
(ハデ始)

戦乙女主催のスイカ割り大会にて。
好奇心で耳寄りな情報を届けてきた蝿により。
始皇帝が他者と楽しく遊んでる映像を見たハデス。

天界の日が暮れる頃、冥界から足を運び始皇帝を迎えに行ったが。
今から花火とやらをするらしいとワクワクしてる始皇帝はまだ帰る予定はなく。
連れ帰るのを保留し、末弟どもまでいる輪の中へと始皇帝と共に行くハデス。

花火とは音が凄いものだと笑う始皇帝は、天に浮かぶ大輪の花を見ることはない。
何が楽しいのか分かりはしない人間の行動に呆れ気味の冥界の王。

周囲の者が天へと向かって声を出していることから。
おそらく火の花が天に咲いているのだろうと推測はする始皇帝。
さぞ美しいのだろうと、その身に花火が開花する音を受け止める。

戦乙女主催のイベントもお開きになり。
さてこの後をどうするかと銘々に楽し気に雑談を始める周囲の中。
終わってしまった花火をいつまでも見上げ続ける始皇帝。

夜は冷え込むと、天を見上げ続ける始皇帝の上から上着を落とすハデス。
さっさと帰るぞと暗に促す神に対し、せっかちなものだと人の子は笑い。
自分の上に落とされた相手の上着を肩へとかけ直す。

今日の楽しかった事を冥界の王へと話してやる始皇帝。
随分と自慢気に話す人間に対し。
何を好き好んで暑い日にわざわざ外へと出るのか理解ができないものだと小馬鹿にするハデス。

その後、一人と一柱が並んで歩く様を見かけた者はいなかったが。
仮に見かけていたら、冥界を統べる王が人間の話へと耳を傾けている姿に、おそらく驚く。


(2021/11/08)
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