萌語り:ハデ始
◆擬い物
(ハデ始)
春燕に会いに行く始皇帝とか。
アルヴィトの協力のもと天馬に乗って春燕がいる所へひとっ飛びし。
何から話そうかと春燕に会える事にワクワクしながら行ったはずの始皇帝が。
声をかけようとした寸前、春燕が息子と一緒に楽しげに暮らしてる事を知り。
一瞬、表情が抜け落ち。
朗らかな笑い声に満ち溢れた母子の様子に、ふわりと笑みを浮かべ。
息災に暮らしているようで何よりだと、その場から背を向けて帰る始皇帝とか。
その後、天界の離宮に思った以上に早く帰ってきた始皇帝をハデスは出迎え。
数日ほどは留守にするやもしれぬと言っていた割に、早く帰ってきたものだなと揶揄するが。
始皇帝からの反応は稀薄で、何かあったのかと詰問すれば、いきなり抱き付かれ。
バランスを崩しかけた神が何かを言う前に。
つとめて明るく楽しげに始皇帝が今日の事をハデスへと報告し始めるとか。
とても幸せそうで良かったと、天にて母子が再会できていたようで良かったと。
そう、喜ばし気に言葉が紡がれていくにつれ、始皇帝の声に揺らぎが混じり始め。
春燕の優しさを疑う気は微塵もない。
会えばきっと、心から喜んでくれると分かってはいる。
けれど――春燕のことを媽媽(マーマ)と呼べるのは自分ではないのだと。
決して、嬉し涙にはなりえないものを静かに零し始める人の子に対し。
愚かなものだと、冥界の王は無言で相手を抱きしめ返す。
(2022/02/28)
(ハデ始)
春燕に会いに行く始皇帝とか。
アルヴィトの協力のもと天馬に乗って春燕がいる所へひとっ飛びし。
何から話そうかと春燕に会える事にワクワクしながら行ったはずの始皇帝が。
声をかけようとした寸前、春燕が息子と一緒に楽しげに暮らしてる事を知り。
一瞬、表情が抜け落ち。
朗らかな笑い声に満ち溢れた母子の様子に、ふわりと笑みを浮かべ。
息災に暮らしているようで何よりだと、その場から背を向けて帰る始皇帝とか。
その後、天界の離宮に思った以上に早く帰ってきた始皇帝をハデスは出迎え。
数日ほどは留守にするやもしれぬと言っていた割に、早く帰ってきたものだなと揶揄するが。
始皇帝からの反応は稀薄で、何かあったのかと詰問すれば、いきなり抱き付かれ。
バランスを崩しかけた神が何かを言う前に。
つとめて明るく楽しげに始皇帝が今日の事をハデスへと報告し始めるとか。
とても幸せそうで良かったと、天にて母子が再会できていたようで良かったと。
そう、喜ばし気に言葉が紡がれていくにつれ、始皇帝の声に揺らぎが混じり始め。
春燕の優しさを疑う気は微塵もない。
会えばきっと、心から喜んでくれると分かってはいる。
けれど――春燕のことを媽媽(マーマ)と呼べるのは自分ではないのだと。
決して、嬉し涙にはなりえないものを静かに零し始める人の子に対し。
愚かなものだと、冥界の王は無言で相手を抱きしめ返す。
(2022/02/28)