◆一寸先は闇検診
（ハデ始）

眼科検診をベルゼブブに頼んじゃった始皇帝とか。

戦乙女主催の人類代表闘士達の健康診断or人間ドックが開催され。
次の会場案内を受ける前に、始皇帝がテクテクと歩いて行ってしまい。
不思議なもので、こういう時ばかり周囲の目を掻い潜って忽然と消える人の王。

そのまま、ベルゼブブの部屋にスタスタと入って行った始皇帝。
人の子の眼科検診を頼まれた蝿は、笑みを浮かべて了解する。

なお、始皇帝は眼科検診を頼んだ相手が誰かよく分かってない。
自分が次に受けるのが眼科検診なるものという事だけは分かってるので。
当然のように相手に用件を伝えただけ。部屋を間違えた自覚はない。

何を考えたのか、ごく普通に始皇帝の眼科検診をするベルゼブブ。
少し観察した後、始皇帝の目に負担がかからない検診方法を提供中。
ふと、星が見える目に関して思考する。

能力は任意なのか自動的になのか。
どの程度の傷がその体に刻まれるのか。
複数の負傷した物体を映した場合はどうなるのか。
傷が出現する速度は、対象の傷が重複した場合の反応は。
そもそも、その目に何が映るのかと。

一方、人類代表闘士達の健診会場では。
始皇帝がいなくなった事が発覚し、迷子の大捜索がされていた。
神々の方にも迷子の捜索連絡が行き、ゼウス経由でハデスにまで届く。
何をしているのかと呆れながら腰を上げ、始皇帝の捜索に加わる冥界の王。

途中、人間を預かってるベルゼブブから連絡が入り。
最悪の事態が容易に想像できる内容に、情報端末を握り潰しそうになった。
ブチ切れ寸前の冥界の王が始皇帝を迎えに行った先にて。
室内に広がっていた光景は――

ベルゼブブから検診結果の説明を受けてる始皇帝の姿だった。

ハデスの迎えが来たことに気付いた始皇帝はのんきなもので。
冥界の王に向かい、迎えに来たことを褒めてつかわす尊大さ。

本当に、一般的な検診のみを提供していたらしい蝿に対し。
何を考えているものかと、ベルゼブブの方へと視線を向ける冥界の王。
凡百の神であれば瞬時に卒倒しそうなほどの冷徹な目で睨まれている中。
そんなにおかしな出来事かい？と蝿は冥界の王へと視線を投げ返す。

神二柱が無言の応酬を交わす中。
何をしているのかと思う、ある意味で豪運の持ち主な始皇帝。
少しでもベルゼブブの気が変わっていたら、どうなっていたかは不明。

その後、事の顛末を冥界の王から説明された戦乙女達は。
ただの眼科検診で綱渡り状態になってた始皇帝に対して、背筋が寒くなった。


（2022/02/03）