萌語り:ハデ始

◆刻印
(ハデ始)

始皇帝に印付けをする冥界の王とか。
場所は、普段の始皇帝の服装で丁度隠れる首の後ろ。

そうとも知らずに過ごす始皇帝とか。
人類代表組達の集まりで、呂布や小次郎と手合わせをして。
闘士達によるただのじゃれ合いではあるが、強者揃いゆえに戦いは激しく。
かなりの運動量なので途中から上着類を脱ぎ捨てつつ戦い。
休憩タイムに入る頃にはすっかりと上半身裸な始皇帝とか。
細身ではあるが惚れ惚れとするほどの肉体美を晒し。
そして、誰も首の裏にある印には気付かない。

その後、休憩の最中にトール神が呂布を呼びに来て。
呂布が他者と手合わせをしていた事に雷神は少しムッとする。
分かりやすい奴だと思いながら呂布はトール神との戦いを望み。
己が好敵手との戦いしか眼中になくなった呂布を見送る人類代表達。

途中、トール神がふと先ほどまで呂布と戦っていた始皇帝へと視線を向け。
暫し無言で眺め、その後、呂布に声をかけられたので視線を外す。
少しばかり、始皇帝の首にあったものに気を取られた。

人間には分からないが、神には分かる刻印。

『……冥界のモノか』とただ理解したトール神。
神にとっては一目瞭然なので、別に何も言わない。
人の子は何も知らないままに健やかに過ごす。

その日の夜。
寝ている始皇帝の頸椎の辺りをハデスはそっと指でなぞり。
自身の首にあるものと同じ印が一つだけ表れている事に目を細める。

大切に大切に、人の子が壊れぬように、逃げないように。
それはまるで、致死にいたる毒への耐性を付けさせるかのように。
緩やかに染めていき、馴染み切ったあかつきには――と。

これは、悠久に存在する神が、初めて待ち遠しいと感じる話。


(2022/01/14)
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