萌語り:ハデ始

◆神への信仰
(ハデ始)

始皇帝に関する地上界の文献にて、『武神・蚩尤を祀りし也』とあったせいで。
他神を信仰していたのかと勘違いするハデスとか。

神様の思考回路は、人間からするとたまに突拍子がなく。
実際には身を削る死闘の末に人食いの化け物を殴り倒しただけだが。
真実を知るのは始皇帝ただ一人な上に、儀式に丸6日もかかったともなれば。
その身をもってどこぞの神の昂ぶりを受け止めたのかと神様スケールで判断してしまった。

それでも、勘違いはしたものの、直情的に人間へと即仕置きとはせず。
本人に話を聞いてから最終判断を下そうとしている分。
だいぶ神の中では人格者な冥界の王。

しかし、問いただしの最中も微妙に話が噛み合わない神と人がいたり。
贄も用意して出向いてやった、と始皇帝が言えば。
それが泥人形の事だとは知らない冥界の王は勘違いし。
自身を贄として出向いたのか?と黙って聞きながらもイライラ度が上がり。

デカくて醜悪だったと端的に始皇帝が魔神・蚩尤の事を説明し。
少し煽っただけで朕に突っ込んできたぞ、と言いながら思い出し笑いをするので。
言葉のチョイスが色々と微妙なせいで加速度的に神の苛立ちは止まらず。
冥界の王は据わった目で聞いている。

もっとも、途中で単に神を名乗る化け物を殴り倒しに行っただけと判明し。
特定の神を信仰していた訳ではないと知り、苛立ちをおさめる。

事実無根な神話や伝承が地上界に蔓延る感覚に覚えがある神は。
この腹立たしき現象に対し名を付けてやりたくなった。


(2022/01/07)
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