ハデ始

「それは貴様の癖なのか?」
「む?」

ハデスの声に反応した始皇帝は、はて、と首を傾げた。
ただ立っているだけで癖もなにもあったものでは無いはずだが。
後ろに手を組んだまま始皇帝がハデスがいる方へと顔を上げれば。
皮肉気な笑い声がしてきた。

「あざといものだな」
「これ、いわれなき中傷は止めよ。朕の何処があざといのか」

人に質問しておいて勝手に自己完結をするとは何事か。
不敬であるぞとばかりに始皇帝が軽く不快を示せば。
始皇帝を眺めていたハデスは呆れたようにため息を吐いた。


「自覚は無いのか」

では、天然でこれかと。
ちんまりと手を後ろに組み佇む始皇帝を見下ろし。
人間の無自覚なる癖を前に神は戦慄さえ覚えそうだった。


先ほどから完全に人の意見を求めていないハデスに対し。
貴様など知らんとばかりに外方を向いた始皇帝は。
口をへの字に曲げて不機嫌さを示した。


「不好。何だと言うのだ、全く」



ちんまりと
いつもの尊大さとのギャップを感じる、人の癖。


end
(2021/12/27)
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