ハデ始

「頭が高い」

ビシッと神へと指を向け、始皇帝は言い放った。
何事かと思いながらハデスが眉を寄せ立ち止まれば。
唐突なるいちゃもんをつけてきた人間はさらに言葉を続けた。

「其方のせいで朕の首が痛くなった――」

先ほどからやけに首に手を当てていたと思えば、そのような理由からかと。
頭一つ分以上は下にある始皇帝を見下ろしながらハデスは納得した。
ならば律義に見上げずともよいだろうとは思うが。


「理不尽ゆえ、背を縮めよ!」

一体どちらが理不尽なのか。
相当に不機嫌な人の子を前に、思わず神は遠い目をしたくなった。

ため息を吐かなかっただけ上出来の部類か。
何処までも上から目線な相手の手をそっと掴み。
問答無用でハデスはその腕に始皇帝を抱き上げた。



理不尽な
「――余が、貴様を抱き上げれば満足か?」
「ふむ? 妥協案としては認めてやろう」


end
(2021/12/22)
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