ハデ始
「メリー・バレンタイン!」
開口一番に景気よく紡がれた言葉と共に、部屋へと菓子がばら撒かれた。
パラパラと色とりどりの小さな菓子類のシャワーを浴び。
暫しの沈黙の後、冥界の王であるハデスは口を開いた。
「何だそれは?」
散らばる菓子の一つを手に取ったハデスは、怪訝そうに物体を眺め。
意味の分からない事をしてきた人間へと視線を戻した。
思った以上に反応が薄い神に対し、始皇帝は首を傾げた。
「バレンタインを知らぬのか?」
「……何処の風習だ?」
神が人間の風習にうとい訳ではない。
全知全能の神々の一柱であるハデスですら、こんな風習は知らない。
地上界の月日に合わせるのであれば現在は12月。
バレンタインと呼ばれる人間の行事は、あと2か月ほどは先か。
否、メリーと付けていた事から察するにクリスマスを勘違いしたのか。
しかし、菓子をばら撒いてきたのは何故なのか、正月の餅まきか、節分か。
カボチャを模した容器に菓子類を入れて持っている様はさながらハロウィンか。
「おてんば娘から色々と当世の事を聞いた中にあった行事である」
「…………」
おそらく絶対に違うだろうと、確信をもって言える。
自信満々な人間を前に、ハデスは頭痛で頭が痛い気すらしてきた。
色々なものが混ざりに混ざり不可思議な化学反応でもしたのか。
嵐のような唐突なる理不尽は神の専売特許のはずだが。
何故こうも目の前の人間は予測不能なのかと。
「愛しい者に、菓子を渡す行事だと聞いた」
唐突、という程ではないが。
人が紡いだ言葉に、神は思考を一時止めた。
まだ多く持っていた菓子を始皇帝は神の前へと全て差し出し。
相手がどう思っているのかすら気にせずに、笑みを浮かべた。
「ゆえに、朕は其方に贈呈する」
一等甘く
美味な菓子を。
end
(2021/12/13)
開口一番に景気よく紡がれた言葉と共に、部屋へと菓子がばら撒かれた。
パラパラと色とりどりの小さな菓子類のシャワーを浴び。
暫しの沈黙の後、冥界の王であるハデスは口を開いた。
「何だそれは?」
散らばる菓子の一つを手に取ったハデスは、怪訝そうに物体を眺め。
意味の分からない事をしてきた人間へと視線を戻した。
思った以上に反応が薄い神に対し、始皇帝は首を傾げた。
「バレンタインを知らぬのか?」
「……何処の風習だ?」
神が人間の風習にうとい訳ではない。
全知全能の神々の一柱であるハデスですら、こんな風習は知らない。
地上界の月日に合わせるのであれば現在は12月。
バレンタインと呼ばれる人間の行事は、あと2か月ほどは先か。
否、メリーと付けていた事から察するにクリスマスを勘違いしたのか。
しかし、菓子をばら撒いてきたのは何故なのか、正月の餅まきか、節分か。
カボチャを模した容器に菓子類を入れて持っている様はさながらハロウィンか。
「おてんば娘から色々と当世の事を聞いた中にあった行事である」
「…………」
おそらく絶対に違うだろうと、確信をもって言える。
自信満々な人間を前に、ハデスは頭痛で頭が痛い気すらしてきた。
色々なものが混ざりに混ざり不可思議な化学反応でもしたのか。
嵐のような唐突なる理不尽は神の専売特許のはずだが。
何故こうも目の前の人間は予測不能なのかと。
「愛しい者に、菓子を渡す行事だと聞いた」
唐突、という程ではないが。
人が紡いだ言葉に、神は思考を一時止めた。
まだ多く持っていた菓子を始皇帝は神の前へと全て差し出し。
相手がどう思っているのかすら気にせずに、笑みを浮かべた。
「ゆえに、朕は其方に贈呈する」
一等甘く
美味な菓子を。
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(2021/12/13)
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