萌語り:ハデ始

◆別・髪長に言葉足らず
(ハデ始)

そこまですれ違わない版。
始皇帝が長髪の姿を冥界の王に見せに行くまでの展開は一緒。

ハデスに長髪を無造作に掴まれ、その痛さに抗議をするが。
容赦なく付けていた髪を引き剥がされ、元の髪型へと戻される。
床へと落ちる残骸と、もう背に感じる事のない感触。
アルヴィトが丁寧に梳って整え、楽しんでいたものは無くなった。

始皇帝から引き剥がした偽りの髪を、冥界の王は床へと投げ捨てる。
同じような色合いを選んだのだろうが、所詮は紛い物。
戦乙女のままごとにでも付き合ったのだろうが。
不快としか言いようがないと。

無理に引き剥がされまだ痛みが残る始皇帝は。
元に戻された後ろ髪へとハデスに触れられ、一瞬身がすくむが。
手つきが先ほどとは違い優しげな事に気付き警戒を解く。

その後、冥界の王から短い髪を愛おしいと示される。

長髪であることを分不相応と否定されたわけではなく。
ただ戦乙女との遊びで付けていた物が気に食わなかっただけだと。
何とも単純な理由から人の付けていた物を剥ぎ取った神に対し。
もう少し朕を丁重に扱えと、始皇帝は苦言する。

廊下の方からアルヴィトが探し回る声が聞こえ。
神の手を離れ、人の子は戦乙女の元へと向かう。

なお、何やらショックを受けた様子のアルヴィトから付けていた髪について問われ。
「無問題。朕には不要な物であった」と報告をした始皇帝は戦乙女に叱られる。

何やらよくわからないままに叱られ。
プリプリと怒る戦乙女の機嫌をとりながら、始皇帝は再度思う。
朕には不要な物であった、と。


(2021/12/01)
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