萌語り:ハデ始

◆続・我愛人
(ハデ始+トル呂)

「あの人間は、ハデス様の事を『我的愛人』だと言っていましたよ」

面白いものですね、とヘルメスが含むように上品な笑みを浮かべれば。
人間が言っていた言葉を知ったハデスもまた、その口元へと笑みを浮かべた。
神が気付くはずもないと侮り零した、愚かしくも愛おしい人の子に対して、嘲笑うように。



みたいな感じで、ヘルメス経由で始皇帝が言ってた事を知ったハデスが。
人の子が冗談の類として終わらせた言葉を、夜の褥にてあえて蒸し返し。
昼にギリシャ神達をからかった始皇帝が自業自得するとか。

余をどう思っているのかと、人の子を攻め立てながら問う冥界の王に対し。
縋りつきながら相手の耳元で小さく「我的愛神」と囁く始皇帝。

強情で、尊大で、神すらもはぐらかそうとする愚かな人の子が。
ようやく告白した言葉に気をよくした冥界の王は。
その後、人間の方が精も根も尽き果てるまで続けたり。

さんざんハデスに貪られ、言いたくなかった事まで言わされた始皇帝。
後日、同じ中国出身の呂布に、神には言わない方が良いと教訓として教えるとか。

始皇帝に忠告され、雷神について考え込んだ結果。
逆にしっくりときてしまった呂布は思う、確かに『我的愛人』ではあるかと。
もっとも、言わぬ方がいい言葉だとも始皇帝の様子を見て理解したので。
不用意に言うことはないと心に決めたが。

始皇帝といる途中で雷神が近付き、何を話していたのかと問うてきたので。
今さっき不用意に言うことはないと判断した内容を口にしてしまった呂布とか。
あっと思った時には時すでに遅く。

近くで聞いていた始皇帝は、真っ昼間から雷神に連れ去られた呂布の無事を祈る。
おそらく無理だろうとも思いながら。


(2021/11/15)
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