萌語り:アポレオ

◆矛盾なき矛盾
(アポレオ)

メリーバッドエンド的な結末の後。
レオニダスを誰にも見せたくなくて囲ったアポロンがゲイレルルと揉める話とか。

ゲイレルルはレオニダスとは正しく相棒というか、それこそ悪友みたいな気心知れてて馬が合う感じで。
少し前に太陽神と付き合うことに関してレオニダスが躊躇してたのも知ってた。その後に絆されてたのも。
だからこそ、アポロンの矛盾した所業が許せなかった。

「ふざけるな、神の気まぐれゆえなら返せ、女神達と遊んでるくせに、レオを弄ぶ気なら許さない」
「ふざけていない、気まぐれなんかじゃない、ビューティーズとは遊びではないし、レオニダスは――」

烈火のごとく燃え盛る戦乙女の怒り、アポロンが反論する途中で平手打ちで黙らせ。
よそ見するような奴が…レオを奪うなッ!と悔し涙を目にためながら神への怒りをつのらせるゲイレルル。

認めてたのに、神のくせに根性がある奴だって、認めていたのに。
くやしい、腹が立つ、返せ、お前なんかがレオを縛りつけるな。
力量差なんて分かってる神に敵わないことなんて知ってる。
それでも行き場のない怒りと悔しさがこみ上げる。

無謀とも呼べるほどに、太陽神に対してどこか甘えがあったゲイレルルとか。
相手が神ではあるがアポロンだからこそ、真っ向から感情をぶつけた。
そこまでクソな神じゃないと思ってたから理由を聞きたかったのに。
何でいまさら、理不尽な神様みたいな真似をするのかと。

非力だと、戦乙女に叩かれた頬に残る僅かな痛みに対してアポロンは思う。
神と戦乙女の間だけでも純然たる差がそこにはある、まして神と人間であればなおの事。
あの闘いで戦乙女との一蓮托生が解けた後のレオニダスからの拳を受けた時もそうだった。

哀れなほどに非力で、本来ならば神の肉体を傷つける事すらできない存在。
そんな存在が神を追い詰め、魂を焦がしあえるほどの闘いを繰り広げて紡いだ。
きっと神をもってしても奇跡と呼べる再会が無ければ、美しいままで完結していた。
完結しているはずだった。

誰に対しても平等なる太陽の唯一の独占欲。
相手の自由を縛りたくないから最大限まで譲歩していたのに。
本当は誰の目にも触れさせたくないし、いつまでも互いのみでありたかった。

周囲が求める太陽神としての振る舞い。
無意識的に人間を下に見る神としての感性。
相手に対する愛おしさと自由を尊重したいという思考。
それらを押しのけ湧き上がる独占欲と支配欲にまみれた感情。

どこかの悪魔の王は最愛の者を手にかけて壊すらしい。
相手が愛おしいからこそ起こる破壊衝動へと憎悪を募らせながら。
それでもなお相手が未来永劫に自分の物になったことを心のどこかで喜び。
喜びが浮かぶこと自体に嫌悪すると。

そんな難儀な神ゆえの矛盾なき矛盾。

その後。
いけ好かない太陽神の態度に怒りと悔しさをゲイレルルは爆発させていたが。
アポロンがレオニダスを手放そうとする気が微塵もない気配だけは感じとり始め。
許さない、ふざけるな、ナルシスト神のくせにレオを独占するなんて図々しい、レオはちゃんと承諾したのか。
グサグサと無遠慮に太陽神へと言葉を突き刺し、最終的にはやっぱり気に食わないと盛大に思いつつも。
何一つとして捨てられない神に対し、全部を捨ててでも絆されてやったレオニダスの覚悟を尊重し。
レオが許してるなら許すと渋々でアポロンを認める戦乙女。

去り際に、「オレ様をレオニダスの相手として認めてくれてありがとう」とアポロンが言い残し。
太陽神の姿が見えなくなった所でむかっ腹を抑えきれず「ざけんな!」と咆えるゲイレルル。
誰が何を言おうが許そうが許すまいがどうでもいいくせに、礼を言うとか嫌味かと。


(2024/02/19)
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