萌語り
◆続・生存+記憶喪失
(リク鏡)
考えだしたら止まらなくなった結果の続き。
再会は唐突に。
ふとした違和感と共に、あの日通った道へと入り込む。
騒ぎ出す気持ちを抑えながら、足早にあの時通った道を辿る。
古民家の開け放たれた障子から見える人物に、さらに足並みは早くなる。
庭へと入り込み、背を向けたままの人物へと近づく。
何を描いているのかは分からない。
鬼ごっこだとふざけたゲームをさせられていた時の様な禍々しい空気は相手にはない。
それでもなお警戒を解かず、足音をひそめながら近づく。
あと少しで縁側までつく時、唐突に筆を置く相手。
また来てくれたのかと問う様に言葉を放たれ、歩みは止まる。
振り向き、あの日にはない色を含んだ目を向けてくる相手は、酷く嬉しげだった。
『あの日から、君のことが気になって仕方がなかった。どれだけ描いても納得がいかないが、君の絵を描くのは楽しい。――もっと君の全てが知りたい』
一面に広がる同じ人物ばかりを描いた絵に息を呑み。
相手の言葉を呆然としたまま聞くリクオ。
人として生きる事は、相手には出来ないのだと。
描く事だけを考え続ける相手は記憶がなかろうと、関係なかった。
それは、妖怪としても何処か歪んでいて、おかしくて。
もう一度刃を向ける気に、なれなかった。
(2015/03/22)
(リク鏡)
考えだしたら止まらなくなった結果の続き。
再会は唐突に。
ふとした違和感と共に、あの日通った道へと入り込む。
騒ぎ出す気持ちを抑えながら、足早にあの時通った道を辿る。
古民家の開け放たれた障子から見える人物に、さらに足並みは早くなる。
庭へと入り込み、背を向けたままの人物へと近づく。
何を描いているのかは分からない。
鬼ごっこだとふざけたゲームをさせられていた時の様な禍々しい空気は相手にはない。
それでもなお警戒を解かず、足音をひそめながら近づく。
あと少しで縁側までつく時、唐突に筆を置く相手。
また来てくれたのかと問う様に言葉を放たれ、歩みは止まる。
振り向き、あの日にはない色を含んだ目を向けてくる相手は、酷く嬉しげだった。
『あの日から、君のことが気になって仕方がなかった。どれだけ描いても納得がいかないが、君の絵を描くのは楽しい。――もっと君の全てが知りたい』
一面に広がる同じ人物ばかりを描いた絵に息を呑み。
相手の言葉を呆然としたまま聞くリクオ。
人として生きる事は、相手には出来ないのだと。
描く事だけを考え続ける相手は記憶がなかろうと、関係なかった。
それは、妖怪としても何処か歪んでいて、おかしくて。
もう一度刃を向ける気に、なれなかった。
(2015/03/22)