柳鏡

「……先に口を放した方が負けか」

柳田からポッキーゲームの説明を受けた鏡斎は、考え込むように呟いた。


「相手の口の中にある菓子まで奪えば終わりか?」
「普通はキスをして終わり哉」
「……それだとどっちが勝ちになるんだ?」
「それは真面目に考えるだけ野暮だよ、鏡斎」


恋人同士のお遊びか、宴会時の余興か。
何にしても、それほど勝敗を気にするものではない。
人の間で流行る遊びの真意を、笑いながら柳田は言った。



「……それで、柳田サンはそのゲームをしたいのか?」


用意された赤い箱に入った菓子と、ゲームのルール説明。
これほどわかりやすい誘いもないと思いながら鏡斎は訊いた。
面倒そうに訊いてくる相手へと、柳田は首を傾げた。


「鏡斎は、やりたくはない哉?」
「キスぐらい、普通にすればいいだろ」
「その過程までを楽しむゲームだよ」
「…………」

いまいちゲームの必要性が分からんと、余計に鏡斎は面倒くさがった。



ポッキーゲーム
「お菓子も食べられるし、一石二鳥だよ?」
「……菓子目的と思われるのは癪だ」


end
(2013/11/11)
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