雷鏡

「たまに焼肉ってスゲー食いたくなるよな!」
「……なんでオレに言う?」


圓潮にでも言った方が早いだろと呆れたように鏡斎は頭を掻いた。
そんな鏡斎の塩対応にきょとんとした顔で雷電は首を傾げた。


「この前部屋に肉一杯あっただろ?」
「あー……あったな」
「じゃあまだ残って!」
「とっくに消したに決まってるだろ」


バッサリと言われ、ガックリと大げさに雷電は肩を落とした。
そもそも、この前部屋にあった肉は描いては殺した作品の残骸。
いつまでもとっておく訳がないだろと鏡斎は言い放ち、止めを刺した。
止めを刺され畳に突っ伏した雷電は、それでも未練がましく呻いた。


「焼肉食いてー」
「圓潮に言え」
「焼肉ー」
「…………」
「やーきーにーくー」
「……和と洋、どっちがいい」


渋々、それはもう渋々と、帰る様子のない雷電に折れ、鏡斎は質問をした。
待ってましたとばかりに顔をあげた雷電は、鏡斎の言葉を反すうし疑問符を浮かべた。



「焼肉に和と洋ってあったか?」
「件かミノタウロスか、好きな方を描いてやる」
「そっちの和と洋かよ! 食える肉が多いのにしてくれ!」



人の家で焼肉が食べたい
「……言っておくが、牛肉は殺してすぐ食べても美味くない」
「じゃあいつ食えるんだよ」
「十日後」
「なげぇ!!」


end
(2016/10/05)
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