雷鏡

皮を剥いて机に置いた途端に、後ろから手が伸びた。


「…………」


ヒョイヒョイと無くなっていく皮を剥き終った甘栗をしばらく眺め。
最後の一つになった所で、鏡斎は伸びてくる手を叩き落とした。


「いてっ!」
「……オレの分が無くなる」


ベチリと音を立て引込められた手。
後ろを振り向けば、叩かれた手を擦っている雷電がいた。


「何だよ、少しぐらい良いだろ?」

口を尖らせた雷電は何が悪かったのかと首を傾げ。
相手の膝の上に座っていた鏡斎は無表情のまま口を開いた。


「二つに一つなら許すが、十個剥いて九個食われるならオレの割に合わない」
「オレの分を剥いてくれてたんじゃないのかよ?」
「……全部食べる気だったのか」


それなら割に合わん、と鏡斎は雷電に背を預けて甘栗を剥く事を止めた。



「鏡斎。オレの手じゃ甘栗剥けねーよ」
「……皮ごと食べろ」
「皮ない方が美味いだろ?」
「そのまま食べた事、あるのか」


それはただのアホだ。
確かに雷電の手で甘栗を剥こうとすれば、砕け散るのがオチだが。
諦めずに食べるにしても、もう少し頭を使えと呆れた。


「おっ、また剥いてくれんのか?」
「……半分はオレの分だ」


今度は間違えるなと念を押してから、鏡斎は甘栗を一つ手に取った。



甘栗
「…………間違えるなって言ったよな?」
「悪かったって! ちょっと数え間違えただけだろ!?」


end
(2015/04/25)
10/16ページ