雷鏡

絵を描き、妖怪を産み出し続ける事を求められている手前。
家に来る者など作品を渡せばさっさと出て行く〈耳〉だけだった。


「……何で来た?」
「何で、つわれてもなぁ?」


唐突な訪問者は、困り果てたように眉をハの字に下げた。
言葉が思い浮かばないかのように頬を掻く〈骨〉を冷ややかに眺めた。
予想外の訪問者の目的がいまいち分からなかった。


「ただ話したかっただけなんだけどよ……あれ? 用が無いと来ちゃいけなかったのか?」
「…………」


勝手に来たくせに今更に疑問と遠慮を見せ始める相手。
さっさと帰らないかと邪魔な相手を眺め続けた。


「まあいいか! 何かあんま話した事ねーから来た!」


作品を求められる方がよほど楽だと思った。



求めない奴
理解が出来ない相手を、初めて知った。


end
(2015/04/21)
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