雷鏡

「鏡斎、そろそろ降りろよ」

胡坐をかいていた雷電は目の前で本を眺めている鏡斎へと言った。
当然のように雷電の膝へと座り、紙をめくっていた鏡斎は平然とした態度で返してきた。


「オレの読書の邪魔するな」
「さっきからずっと春画ばっかり眺めてるくせにそこまで平然と言えるお前がすげーぜ」

鏡斎がじっくりと眺める本の内容に気まずげに雷電は目をそらした。


「なあ、面白いか?」
「……ああ」
「ずっと眺めてるけどよぉ、もやもやしねぇのかよ」
「ムラムラの間違いだろ」
「何のために読んでんだよ」
「…………」
「おい、無視か? 鏡斎」

何でこいつの家に来たんだっけなぁ、とらちのあかない事を考えながら雷電は鏡斎の椅子役を続けた。



「雷電」
「ん?」
「この状態でオレの両足抱えられるか?」
「こうか?」

軽々と鏡斎の足を抱え上げた雷電は、これがどうかしたのかと疑問符を浮かべた。
暫く黙りこんだ鏡斎は本を再度眺めてから呟いた。



「……めんどくさい時はこっちでいいな」



一手考察
「鏡斎、いつまで抱えてればいいんだよ?」
「もう降ろしていい、十分わかった」


end
(2012/05/01)
3/16ページ