雷鏡

鈍い音と共に家全体が揺れたのを感じ、筆を止めて鏡斎は振り返った。


「……またかよ」

頭を押さえながらしゃがみ込んでいる雷電を眺め、ため息を吐いて呆れた。

「あーくそっ…いってー」
「何度目だ」
「お? よう鏡斎! 圓潮からの土産があるから茶でも淹れて食おうぜ!!」

痛みを忘れた調子で明るく言う雷電。
実際に忘れてるんだろうなと考えながら鏡斎は、そうかよと返した。



「しっかしよぉ、鏡斎。お前相変わらずちっせー家に住んでんな」

窮屈そうに胡坐をかいて座る雷電は、部屋を見渡しながらバッサリと言った。
埃を被っていた湯呑と急須を探してきた鏡斎は、その言葉に即答した。

「普通だろ」

お前がデカいからだとも言いたかったが面倒なので口を噤み、いつ買ったのか忘れた茶葉を急須に入れ始めた。
台所で火にかけていたヤカンから音が聞こえてきたので立ち上がろうとした鏡斎は、軽く制してきた手に止まった。


「オレが取ってくるぜ」
「そうか……また頭打つ」

なよ、と言う前に頭をぶつけていた雷電はしゃがみ込んで頭を押さえていた。


鳥頭
「……お前の物覚えが悪い理由が分かった気がするぜ」


end
(2012/01/31)
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