圓鏡
「……あんたもよくよく人前で喋るのが好きだな」
パラパラと雑誌を眺めながら聞いてきた鏡斎に対し。
圓潮は珠三郎辺りが買ってきたのかと思いながら返した。
「その雑誌の事かい?」
「よくありもしない事言っててバレないな」
「そうかい?」
「ああ」
圓潮ならば嘘すらも真実だと思い込ませることは容易だろう。
それでも鏡斎は、ある意味感心しながら雑誌の記事を指差した。
「このあんたの妻の話とか特にな」
「それはお前さんの事だよ」
「……オレはいつあんたの妻になった?」
「あたしとお前さんで初めて共同作業をして、子供を作り上げた時からじゃないかい?」
「…………」
「と、まぁ冗談はこれぐらいにして」
「冗談のたちが悪いな」
一瞬疑いたくなるほど流暢な冗談を言うなと白けた目を鏡斎は向けた。
そんな反応に苦笑しながら圓潮は話の続きを口にした。
「嘘を言うにしても、何かしら真実があった方が人は信じやすいだろう?」
「まぁな」
「身近にいて、なおかつ普段は出歩かず家にいる人物像として使わせてもらっただけだよ」
「……そうかい」
自分の事とは思わなかった雑誌の内容を一瞥し。
雑誌を無造作に投げ捨てるように置いた鏡斎は、絵を描くために立ち上がった。
嘘八百雑誌
「おや、もう読まないのかい?」
「読む気が失せた」
end
(2016/02/02)
パラパラと雑誌を眺めながら聞いてきた鏡斎に対し。
圓潮は珠三郎辺りが買ってきたのかと思いながら返した。
「その雑誌の事かい?」
「よくありもしない事言っててバレないな」
「そうかい?」
「ああ」
圓潮ならば嘘すらも真実だと思い込ませることは容易だろう。
それでも鏡斎は、ある意味感心しながら雑誌の記事を指差した。
「このあんたの妻の話とか特にな」
「それはお前さんの事だよ」
「……オレはいつあんたの妻になった?」
「あたしとお前さんで初めて共同作業をして、子供を作り上げた時からじゃないかい?」
「…………」
「と、まぁ冗談はこれぐらいにして」
「冗談のたちが悪いな」
一瞬疑いたくなるほど流暢な冗談を言うなと白けた目を鏡斎は向けた。
そんな反応に苦笑しながら圓潮は話の続きを口にした。
「嘘を言うにしても、何かしら真実があった方が人は信じやすいだろう?」
「まぁな」
「身近にいて、なおかつ普段は出歩かず家にいる人物像として使わせてもらっただけだよ」
「……そうかい」
自分の事とは思わなかった雑誌の内容を一瞥し。
雑誌を無造作に投げ捨てるように置いた鏡斎は、絵を描くために立ち上がった。
嘘八百雑誌
「おや、もう読まないのかい?」
「読む気が失せた」
end
(2016/02/02)