圓鏡
ただ遠出をしていただけで、何故こんな状況になったのか。
周りを取り囲む妖怪達を見渡し、圓潮はため息を吐いた。
「そもそも、あたしは肉弾戦派じゃないよ」
「奇遇だな、圓潮。オレもだ」
ドスを構えながら愚痴る圓潮に、鞭を振るっていた鏡斎は賛同した。
何故こうまで善良としか言いようのない自分達を囲むのか。
こんな事なら、雷電か珠三郎でも連れてくればよかったかと今更に考えた。
嫌になるほど大量にいる妖怪達に対し、辟易とした顔で二人は対峙していた。
「――少し思ったんだけどネェ、鏡斎」
「なんだよ、圓潮」
辛うじて敵の一撃を防いでいた圓潮は、ふと思い出したように呟いた。
近付く敵の足止めをしていた鏡斎は、息が上がった状態で圓潮へと振り返った。
「慣れた得物の方が、いいに決まってるとは思わないかい?」
「……そうだな」
何を今まで不慣れな得物を使っていたのか。
咄嗟の事で気が動転でもしていたのかと思いながら、二人は武器を捨てた。
囲まれた状況での非常識な行動に、周りにいた妖怪達は呆気にとられた。
服の中にしまっていた物をそれぞれ手に持った二人は、そんな周りを全く気にしていなかった。
殺傷力のあるドスでも、近付かせないための鞭でもない。
こんな場では非常識の塊でしかない物を手に、二人は周りにいる妖怪達を見渡した。
手に馴染みきった扇を広げ、圓潮は笑みを浮かべた。
扇と筆
「さて、何の噺を語ろうかネェ?」
end
(2013/09/08)
周りを取り囲む妖怪達を見渡し、圓潮はため息を吐いた。
「そもそも、あたしは肉弾戦派じゃないよ」
「奇遇だな、圓潮。オレもだ」
ドスを構えながら愚痴る圓潮に、鞭を振るっていた鏡斎は賛同した。
何故こうまで善良としか言いようのない自分達を囲むのか。
こんな事なら、雷電か珠三郎でも連れてくればよかったかと今更に考えた。
嫌になるほど大量にいる妖怪達に対し、辟易とした顔で二人は対峙していた。
「――少し思ったんだけどネェ、鏡斎」
「なんだよ、圓潮」
辛うじて敵の一撃を防いでいた圓潮は、ふと思い出したように呟いた。
近付く敵の足止めをしていた鏡斎は、息が上がった状態で圓潮へと振り返った。
「慣れた得物の方が、いいに決まってるとは思わないかい?」
「……そうだな」
何を今まで不慣れな得物を使っていたのか。
咄嗟の事で気が動転でもしていたのかと思いながら、二人は武器を捨てた。
囲まれた状況での非常識な行動に、周りにいた妖怪達は呆気にとられた。
服の中にしまっていた物をそれぞれ手に持った二人は、そんな周りを全く気にしていなかった。
殺傷力のあるドスでも、近付かせないための鞭でもない。
こんな場では非常識の塊でしかない物を手に、二人は周りにいる妖怪達を見渡した。
手に馴染みきった扇を広げ、圓潮は笑みを浮かべた。
扇と筆
「さて、何の噺を語ろうかネェ?」
end
(2013/09/08)