断片話

◆気違いに刃物
(柳鏡)

何の躊躇もなく提供された肉を、暫く呆然と眺めていた。

「……肝臓とかの方がよかったか? 柳田サン」

なんなら追加でさばこうかと訊いてくる相手は平然としていて。
その事が余計に、これは現実の事なのかと疑問を浮かべた。

「さっきから黙ってるが、いらなかったかい?」
「まさか君が賛同してくれるとは思わなくて」
「互いの肉の味を知りたくなるぐらい、普通だろ」
「普通……普通なの、哉?」
「普通だろ?」

さも当然と紡がれる言葉に、此方の方がおかしいのかと思えてくる。


(2020/01/03)
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