断片話

◆敵情視察
(圓鏡)

「奴良リクオはお前さんの来るものにはならなかったかい?」
「ただのガキだろ? 人間の」

幼馴染の妖怪達と元気よく遊びまわる人の子。
あの子供からは、全く妖怪としての気配がなかったと鏡斎は一笑に付した。

「そうだネェ――奴良組でも、その事で随分と跡取り問題で揉めてるそうだよ」
「……人間の子として育ってるからか」
「ようやく授かった一粒種。大層大事にしてるらしいが、血が薄まり過ぎたんだろうネ」

いっそ、そのまま血など絶えてしまえばいいと苦笑しながら圓潮は呟いた。


(2016/10/02)
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