断片話

◆平和的な喧嘩
(圓鏡)

「……また、オレの作品を使い潰したな。圓潮」
「惜しい噺だったが、あたしも万能って訳じゃなくてネェ」
「もう少し反省の色は無いのかよ」
「じゃあどうしたいんだい、お前さんは? 外に出さずに蔵にでも入れて日の目も見せずに大切にしてろとでも言いたいのかい?」

贅沢な申し出だと嘲るように圓潮は目を細めた。
拡大解釈もはなはだしい皮肉に、舌打ちをせんばかりに鏡斎は相手を睨んだ。

「やべぇ、圓潮と鏡斎がこえぇ……」
「余所でやってよ、余所で!」

雷電と珠三郎は顔を引きつらせながら小声で言った。
非戦闘員同士の喧嘩が、何故こうまで恐ろしいのか。
平和的な方法に代表されるはずの口論が、全くもって平和ではない。
言葉で殴り合う口と腕を遠巻きに眺め。
出来る事なら自分達がいない場所でやって欲しかったと切に思った。


(2016/01/28)
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