断片話

◆催涙雨
(圓鏡)

「……よく来れたな、圓潮」

縁側にいる人物を鏡斎は暫く眺め。
この大雨の中、何を好き好んで出歩いたのかと眉を寄せた。
あとは何の用で来たのかと疑問に思っていれば、相手は飄々とした態度で口を開いた。

「昔話の馬鹿な恋人達じゃあるまいし、カササギなんざ必要もないからネェ」
「…………来た理由は七夕か」
「その調子じゃ忘れてたのかい?」
「行事なんか一々覚えてるかよ」

そもそも日付すら曖昧な中で、行事を律儀にする方がおかしい。
毎年、飽きもせずに各行事を大切にする相手の方が稀有であり、変だ。

「あんたは行事が好きだな」
「何事もメリハリは肝心だろう?」
「……しらじらしい」


(2015/07/07)
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