断片話

◆忌日
(雷+珠)

「地獄絵図だな」
「本当、死ぬまでにどれだけ描いたのかしら?」

地獄に落ちた先にて、合流を早々にはたした雷電と珠三郎は、目の前の光景に何とも言えなくなった。
百鬼夜行のように妖怪達を引き連れる兄弟の内の一人を見つけた事を、若干後悔した。

「あれって鏡斎が前に描いてたのもいねーか?」
「いるでしょうね。圓潮が昔語ってた妖怪もいるもの」

むしろ、この短時間内によくぞ産みの親を見つけられたものだと一種感心したくなった。

「近付きにくいよなぁ」
「そうね」

声ぐらいはかけようかと思ってはいる。
ただし、周りにいる鏡斎が生前産み出した妖怪達がいなければの話だが。

「あれってまだ増えんのか?」
「どうかしら?」

だいぶ現実逃避をしたくなった地獄での生活一日目だった。


(2015/04/22)
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