断片話

◆連れ去り方の違い
(雷鏡+切)

「……珍しいな。細道はどうした?」
「強制的に連れてこられました」

居住まいを正し大人しくその場に座る怪人の口調は、忌々しげだった。
元々領域型の妖怪は自分の住処から離れたがらない。
その特徴を色濃く反映している怪人は、不本意だと言わんばかりの顔をしていた。

「誰が連れてきた」
「木槌を持った、大男に」

述べられる特徴に該当する人物は、すぐに頭に浮かんだ。



「あーなんかデカい鋏振り回す奴だろ?」
「…………そうだな」

印象がそれだけかと聞き返しそうになったが、寸前で止めた。
おそらく雷電に何を言った所で意味はない。

「それなら殴り倒してから連れてきたぜ」

あっけらかんとした調子で答える雷電に、悪意はなかった。
もっとも、悪意がない分たちが悪いとも言える。

声をかけたが拒否をされた、だから気絶させて連れてきた。
その過程で下手に雷電を刺激していたらと考えると、頭が痛くなる。
致命傷を負わずにすんだだけ、あの怪人は幸運としか言いようがない。

「……随分と、オレの時とは違うな」

雷電に青蛙亭へ強制連行された事は幾度かあるが、気絶はさせられていない。
来るものがあった時に邪魔をされ攻撃し、両腕を折られた事はあったが、そんなものは一度きりだ。
大抵は勝手に抱きかかえられ連行される。暴力などほとんどない。


(2015/02/12)
66/98ページ