断片話

◆真相究明


「鏡斎の絵、だろうネェ?」

柳田の報告を聞いていた圓潮は、結論を言うように口にした。
その言葉を、やはりといった顔で柳田は聞いた。

「しかしまぁ、そうなると随分とつまらない絵を描いているね」
「同じ絵ばかりを描くなんて事を、鏡斎がするとは思えません」
「そうだろうネェ」

あの鏡斎が、大人しく同じ絵を描き続けられるはずがない。
数日とせずに飽きて妖怪を産み出し始めるはずだ。

「脅迫されている可能性は……」
「鏡斎に脅迫? どうやればあの鏡斎に脅迫が出来るか、あたしが逆に聞きたいよ」
「……そうですね」

脅迫のネタがまず思い浮かばない。

「とりあえず、絵の出所を探りなさい。柳田」
「それは構いませんが、圓潮師匠……仮に妖怪の絵が出回った時はどうしますか?」
「……残らず回収、するのも面倒な話だネェ」

しかし、怪談噺のない妖怪を所構わず野放しにしていいものかどうか。
少し考えた後、圓潮は渋々ながら口を開いた。

「あまりお粗末なものは困るが、人の畏れが取れるなら放っておこうか」
「……分かりました」

出来るだけ早く出所を突き止めなければいけない理由が、一つ出来た。

「全く、嫌な感じだネェ」

何事もなく、ただのお遊びであればいいと思う。
ただ、おそらくそうはいかないだろうと圓潮はため息を吐いた。


(2013/12/25)
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