断片話

◆独占欲
(切鏡)

顔がなく泣いている少女達に近づき、その内の一人へと鏡斎は笑みを見せた。

「……君がいいな」

切取られ窪んだ少女の顔を間近で眺め、触れようと手を伸ばすと、後ろから手首を掴まれた。

「〈小生〉の細道に、何の用でありマシょうか」

不当に侵入した鏡斎の手首を掴んだ男は、不機嫌そうに質問をした。
一連の出来事に困惑し、互いに寄り添い合う少女達に対し、早く散れと男は睨みつけた。
男が睨みつけた瞬間に、少女達は小さな悲鳴を上げて細道の奥深くへと逃げ出した。
手首を掴まれた状態で少女達が逃げる様子を眺めた鏡斎は、後ろにいる男へと視線を向けた。

「趣味がいいな、オレの好みばかりだ」

顔の方もさぞかし良いものだったのだろうと確認を取るように鏡斎は訊いた。


(2013/09/28)
59/98ページ