断片話

◆扇風機
(雷鏡)

「ずるいだろ鏡斎。もう少し横にいけよ」
「……引っ付くな、暑い」

扇風機前にて並ぶ雷電と鏡斎に対し、呆れた調子で圓潮はため息を吐いた。

「お前さん達、一箇所に固まりすぎじゃないのかい?」

何をそんなに引っ付きあっているのかと、疑問の目を向ける圓潮。
汗一つかかず涼しげな相手の質問に対し、鏡斎は心底面倒そうに答えた。

「……オレが先にいた場所に、雷電が後から来て引っ付いてきただけだ」
「仲良く半分ずつ使おうぜって言っただろ?」
「断る。半分以上の場所取られるのが目に見える」
「まあ、雷電の巨体なら、そうなるだろうネェ」

扇風機の首振り機能をフルに使ったとしても、雷電がいれば場所は足りそうにない。

「場所が足りないなら、雷電を椅子代わりにしたらどうだい?」
「……密着した部分が熱かった」
「一応は試したのかい」



「扇風機がないなら団扇で頑張りなさい」
「団扇ならさっき壊れたぜ?」

ポッキリと柄と扇部が分かれた団扇を指し、雷電は堂々と宣言した。

「――何があれば団扇が壊れるんだい?」
「こう、思いっきり振ってたらポッキリいった」

フルスイング並みの速度で手を動かす雷電。
その速度で振れば、華奢な団扇の末路は分かる。


(2013/09/05)
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