断片話

◆茶の間会議
(幹部達)

「奴良組は定期的に総会があるのに対して、なぜワシの組はないんじゃ」

奴良組から帰ってきて早々、独り言にしてはかなり大きめな声で〈脳〉は呟いた。
柳田が買ってきた土産で茶を飲んでいた幹部達は、また面倒なこと言い始めたぞと互いに顔を突き合わせた。

「ちょっと、誰が相手する? あたしは嫌よ?」
「そうは言ってもよぉ、珠三郎」

誰も好き好んで面倒くさそうな相手に関わりたくないだろ、と頬を掻きながら雷電は呟いた。

「なんとかできねぇか鏡斎?」
「……オレに頼るな、雷電」

隣の方で土産の菓子を食べていた鏡斎へと話を振るが、一瞬にして撃沈した。
面倒な事をするぐらいなら、絵を置いて逃げるぞと顔に書いてある鏡斎に、それ以上言う言葉がなかった。
誰が〈脳〉の相手をするかで揉める中、柳田だけは帰ってきた〈脳〉を見ながら、軽く考え事をしていた。

「山ン本様の分もお茶の用意をした方がいいの哉?」
「柳田サン、論点がズレてる」
「ちょっと! 絶対に用意しないでよ!」
「愚痴聞きながら飲みたくねぇよ!」

〈脳〉に聞こえない程度の小声で、話し合いと言う名の擦り付け合いをしている最中。
らちが明かないとばかりに、一番初めにため息を零したのは圓潮だった。

「お前さんたちネェ……あたしが説得するから暫くは黙ってなさい」

かなり渋々ながら小声で言った圓潮は、不満げに入口に立っていた〈脳〉へと笑みを向けた。

「山ン本さん。折角の茶の時間に、野暮な事は言わないものですよ」
「しかしのう、圓潮。奴良組と比べると、さぼってる様にしか見えん」
「いえいえ、これも立派な総会風景の一つですよ」
「奴良組では会席を食べながら悪事を披露しあってたぞ?」
「奴良組と百物語組、それぞれ組がちがう中、同じ方がおかしいですよ」

まだ何かを言いたげに口をへの字に曲げる〈脳〉。
それに対し、何処までも爽やかな笑みを圓潮は浮かべ続けた。


(2013/07/17)
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