断片話

◆戯れ
(有→鏡)

抵抗しない相手の体に指を這わせ、眉一つ動かさない事に少し不満に思った。
わざわざ傷の上を触っているのに、ちっとも痛そうに見えない。

「痛くない?」
「……痛いぜ」

痛覚がないのかと思えば、平然と痛いと言う。
表情を作る筋肉が麻痺してるのかと思うほどの無表情。
そんな顔で言われても本当に痛いのかと疑問に思う。
それとも、意識して表情を作らないのか。
圓潮といた時はそこそこに表情を出していたのに、何故自分といる時はこんなにも表情がない。
楽しもうと思ったのに、少しも面白くない。
相手の上から退き、諦めて部屋から出る間際、ふと散らばる紙を眺めてから振り返った。

「新しい紙、持ってこなくてもいい?」


(2012/07/22)
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