断片話

◆ナイロンザイル並み
(圓鏡)

「どういう理由で女になったんだい、鏡斎」

正座をさせ、真正面から相手を見ながら圓潮は言った。
見た目だけは女性の鏡斎を前に、こめかみの辺りが痙攣しそうだった。
無駄に出来がいい所が余計に目も当てられない。

「失敗ぐらいたまにはある」
「その割に、やけに手際よく風呂の準備をしてたもんだ」
「圓潮。……女になったのは仕方ないだろ?」

神経が図太いと言うべきなのか。
利用できるものは何でも利用するとばかりにキッパリと言う鏡斎。
あっさりと現状を受け入れている鏡斎の態度に圓潮は頭が痛くなってきた。

「馬鹿を言ってないでさっさと戻りなさい」
「来るもん来ねぇから暫く無理だ」
「どうすれば来るんだい」
「銭湯に行けば来るものがある気がする」
「……堂々と言うお前さんの神経はどれだけ太いんだろうネェ?」


(2012/07/15)
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