断片話

◆気狂い
(切鏡)

「都合のいい相手なのは事実だろ」
「そのように作ったのは貴方でありマシょう」
「……嫌なら止めればいい」

ごく当たり前の様に言う鏡斎に、服を脱がそうとしていた男は手を止め訊き返した。

「別の方を呼ぶ積もりで?」
「柳田サンあたりならすぐ来るからな」

嫌なら止めろ、嫌じゃないならグダグダ言わずに続けろ。
ハッキリとそう態度で示す鏡斎を前に、男は一瞬黙り込んでから、口の端を吊り上げた。

「貴方の相手を務められるのは〈小生〉ぐらいでありマシしょう」

皮肉気な笑みに残虐性を滲ませる男に、鏡斎は微かに笑った。


(2012/07/01)
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