断片話

◆観察
(柳+鏡)

趣味人か、ただの不精者か。
絶えず芸術の極みとも言える絵を生み出す〈腕〉を眺め柳田は首を捻った。
正直な所、目の前の人物との接し方がよく分からなかった。
そもそも、地下にいた時からよく分からない人物だった。
執着があるとすれば絵に対してのみ。
来るものがないと休む時意外は何時間でも描き続けている。
それでいて描いた絵は出来不出来関係なく無造作に畳に並べている。
こちらからすれば何処にかしがあるのか判別できない作品ばかりだ。
一人暮らしをするわりに生活感がかけらたりともなく。
見かねた圓潮が様子を見に行ってくれと言わなければ、ずっと関わりはしなかったかもしれない。


(2012/06/26)
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