断片話

◆情け
(切鏡)

「何故、〈小生〉を拒まないのでありマシょうか」
「拒む理由がないだろ」
「手放した作品が、長く残る事を知らないゆえの情けでありマスか」
「……あぁ、そうかもな」

掴んでくる手に一層力が込められ、鏡斎は僅かに眉を寄せた。


(2012/04/20)
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