断片話

◆眠れない
(圓鏡)

「先に寝ても構わないよ、鏡斎」
「……まだ終わらないのかよ」
「夜の部があるからネ」

とうぶんは終わらないと言う圓潮に、鏡斎は視線を外した。



何枚描いたのか忘れたころになって、後方から声がかかった。

「そんな乱れた筆じゃいい作品もできないだろうに」
「……夜の部は」
「もう終わったよ」

今を何時だと思っているのかと、呆れたように圓潮は答えた。

「先に寝てても構わなかったのにネェ」
「あんたがいないと寝床が冷たい」
「あたしは湯たんぽ代わりかい?」


(2012/03/25)
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