断片話

◆比喩


「まるで鳥籠哉」

今にも崩れそうなあばら家を思い出し、独り呟いた。
住んでいる人物は知っているのだろうかと歩きながら考えた。
死なないよう時折誰かが立ち寄り、気に入りそうなものを与え、真綿のような鎖で引き留める。
実際には本人の意志さえあれば簡単に出られる、そんな鳥籠。

「まぁ、知るも知らないも関係ない事だろうけどね……」

そんなものを気にするような人物でもないと軽く苦笑し、彼の作品の様子を見に行くことにした。


(2011/12/20)
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