断片話

◆拒否
(柳鏡)

「……二度と来ないでくれ」

こんな感情は邪魔だと思った。
不快としか言いようのないもの。
描いている最中に脳裏にチラつく人物。
駄作しか描けなくなっていく。
その事が何よりも嫌だった。

「鏡斎。君にとってボクはいらない存在哉?」
「ああ、そうだな」

余計に酷くなるだろうと、どこかでは思っていた。
それでも、近くにいる限り相手の事ばかりが気にかかるのが嫌だった。
絵以外の事を考える頭が嫌いだった。
余計な感情はいらない。
ただ絵を描いていたい。
だから、いなくなってくれ。


(2011/12/02)
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