断片話

◆喪失


軽い喪失感に、外を映し出す画面をふと眺めた。

「……家にいれば良かったのにネェ」

痛い痛いと〈脳〉が騒ぐ傍で、今さら悔やんでも仕方のない事を呟いた。
絵を描く、それだけを求め続けた相手の生涯最後の地獄絵図。
出来る事なら、それが鏡斎にとって納得のできる出来であればいいと思った。

「圓潮ぅ、本当に大丈夫なのかのう」

感傷に浸る暇もない。
煩く騒ぐ〈脳〉に、軽い溜息をついて慰める為の言葉を選んだ。


(2011/11/19)
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