断片話

◆血で描いた妖怪
(圓鏡)

描き終わった瞬間に本物の妖怪になる作品。
周りにいたヤクザ崩れ達に襲い掛かるのを他人事のように眺めた。
阿鼻叫喚の地獄絵図には程遠い。
それでも、自分の描いた作品が暴れまわるのを見るのは楽しかった。

「縄切らせてから暴れさせればよかったな……」

間の抜けた状態のまま呟いた。



「迎えに来たよ、鏡斎」
「……圓潮」

見上げればしかめ面をした圓潮がいた。

「お前さんが珍しく外出したと思ったあたしが馬鹿だったネェ」

しゃがみ込み、縄を解き始める圓潮。
圓潮が解いた縄を床に落としながら、圧迫されていた部分を擦った。

「機嫌、悪そうだな……」
「極めつけに悪いよ」

誰のせいだと含ませる圓潮は据わった目で軽く睨んできた。

「……あんたが怒ってるのは〈産む〉役がいなくなるかもしれなかったからか?」


(2011/11/062)
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