断片話

◆三者三様
(鏡斎受け)

大量に料理を食べる野風と樽ごと酒を抱える勢いで飲む雷電。
それらを横目にちびちびと杯を重ねていった鏡斎はふと手を止めた。
酒はどれも美味かったが、今飲んでる酒は好みだと何となく思った。

「圓潮、さっきの酒……」
「ん? 残念だけど、今さっき雷電がラッパ飲みしてなくなったよ」

もう少し早く言ってくれればよかったけれどネ、と返す圓潮。
不満そうな顔をする鏡斎に、軽く笑いながら自分の杯を揺らした。

「あたしの分でよければ飲むかい?」
「……いる」



「……寄越せって言ってるだろ?」
「鏡斎!? 何すんだよお前!!」

鞭で拘束をされてギャーギャーと喚く雷電を足蹴に、鏡斎は据わった目で言い放った。

「一人でどれだけ酒飲んでるんだよ、少しはこっちにも回せ」
「まず解けよ!!」
「……酒渡すのが先だろ」



「……くれないのか?」
「鏡斎、あげたくてもボクの所にはもうないよ?」
「もうないなら、せめて味だけでも教えてくれよ」
「鏡斎ッ! 少し顔が近すぎる哉!?」

焦る柳田にお構いなしに鏡斎はさらに顔を近づけた。

「ダメか? ……柳田サン」
「~~ッ! 鏡斎の為なら何でもあげるよ!!」

何をする積もりかは分からないけどね!と錯乱する中柳田は叫んだ。



圓潮達は、急に崩れ落ち眠りこける鏡斎の顔を覗き込んだ。

「酔ってるなら顔に出ればいいのにネェ?」
「一番わかんないぜ鏡斎は!」
「ボクのときめきを返して欲しい哉……」


(2011/11/03)
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