断片話

◆心配
(柳鏡)

「壁が薄いどころか、これだと外から丸見え哉」

「誰もとおりゃしねぇよ」

のっそりと起き上がった鏡斎は自分の格好を見下ろして頭を掻いた。
ご丁寧にかけられていた相手の打ち掛け。
どうせならいつもの服を着せてくれればいいものをと思った。

「紙が二、三枚駄目になってしまったね」
「……そうだな」

だから別の部屋がよかった、と言う気力は無かった。

「鏡斎」
「なんだい、柳田サン」
「ボクは不安でしょうがないよ」

鏡斎が無防備過ぎて、と続ける柳田。
見つめてくる柳田に対し、鏡斎は僅かに顔を顰めた。


(2011/08/24)
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