小説
呼称設定
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ラグナロクにて人類代表と戦った神々の一部には、とある不満があった。
対戦相手であった人間が、己が名を呼ぼうとしないことに。
北欧最強の雷神であるトールもまた。
好敵手である呂布に名を呼ばれないことを不満に思っていた。
故に、至極まっとうな要求を、今更ながらにトールは呂布へと申し出た。
「――我にお前の事を『雷神』ではなく名で呼べと?」
これまで、呂布は好敵手である神のことを雷神と呼んでいた。
他に雷を司る神がいようが関係なく、雷神と呼び続けていた。
まさか名を覚えていないのかと神側が杞憂すれば、それは否と返されたが。
何故か、呂布奉先は好敵手である神を雷神としか呼ぼうとしなかった。
おそらく神側から言われなければ、名で呼ぶことはなかった。
「…………」
「…………」
無理難題を言った覚えはなかったが、考え込むように友が口を閉じてしまい。
悠久に存在する神にとって瞬きにすら満たないはずの時が、異様に長く感じた。
ただ名で呼んで欲しいと、神であるトールは呂布へと言っただけだった、はずだが。
双方無言のまま、じっとトールは呂布を見つめて待ち続け。
「…………とーる」
一言。
ようやく口を開いた呂布が出した音に、トールは目を瞬かせた。
自分で口にした音に、呂布本人も納得はできないようで。
二度は言わぬとばかりに固く口は閉ざされた。
遥か昔、まだ神が人類の増長に対し手を下していた頃の人類存亡会議にて。
バベルの塔を壊したさい、言語の細分化という罰を与えたことがあった。
その名残によって正確に音が紡げないのかと、トールは冷静に分析するが。
友にとっては不可抗力であることを分かっていながら、思ってしまった。
不覚にも
可愛らしいと。
end
(2021/09/20)
対戦相手であった人間が、己が名を呼ぼうとしないことに。
北欧最強の雷神であるトールもまた。
好敵手である呂布に名を呼ばれないことを不満に思っていた。
故に、至極まっとうな要求を、今更ながらにトールは呂布へと申し出た。
「――我にお前の事を『雷神』ではなく名で呼べと?」
これまで、呂布は好敵手である神のことを雷神と呼んでいた。
他に雷を司る神がいようが関係なく、雷神と呼び続けていた。
まさか名を覚えていないのかと神側が杞憂すれば、それは否と返されたが。
何故か、呂布奉先は好敵手である神を雷神としか呼ぼうとしなかった。
おそらく神側から言われなければ、名で呼ぶことはなかった。
「…………」
「…………」
無理難題を言った覚えはなかったが、考え込むように友が口を閉じてしまい。
悠久に存在する神にとって瞬きにすら満たないはずの時が、異様に長く感じた。
ただ名で呼んで欲しいと、神であるトールは呂布へと言っただけだった、はずだが。
双方無言のまま、じっとトールは呂布を見つめて待ち続け。
「…………とーる」
一言。
ようやく口を開いた呂布が出した音に、トールは目を瞬かせた。
自分で口にした音に、呂布本人も納得はできないようで。
二度は言わぬとばかりに固く口は閉ざされた。
遥か昔、まだ神が人類の増長に対し手を下していた頃の人類存亡会議にて。
バベルの塔を壊したさい、言語の細分化という罰を与えたことがあった。
その名残によって正確に音が紡げないのかと、トールは冷静に分析するが。
友にとっては不可抗力であることを分かっていながら、思ってしまった。
不覚にも
可愛らしいと。
end
(2021/09/20)