断片話
◆雷鳴を乞う龍
好敵手である人間を組み伏せている中。
天から降り注ぎ始める雨に気付いたのはいつからだったか。
「お前が降らせているのか――」
降りしきる雨音により睡眠を邪魔されたのか。
いつの間にか目を覚ましていた人間は横たわったまま。
こちらを振り向きもせずに問いかけてきた。
「……管轄外だ」
「ならば雨を降らせている管轄の神とやらを教えろ、不快だ」
「寝台の上で、他神の名を口にする気か貴様は」
他の存在を気にかけるなど無粋の極みではないのか。
「……もっとも、この地にそのような存在は居はしないが」
「全ては偶然であると?」
それにしては頻度が高いものだと疑問視する人間の言葉に。
確かに、偶発的なものにしては他意がありそうな気がしてくるが。
この地に天候に干渉できるほど力を持つものなど存在はしない。
仮にいたとするなら、それは何のために雨を降らす。
雨ばかりを降らし何になるのかと思考していれば。
ふと、思いつくものがあった。
「あるいは、雷を求める龍が降らせているのかもしれないな」
「くはッ、随分と迷惑な龍がいたものだ」
冗談だと受け取り、また微睡みへと人間は戻っていった。
その体には龍がいる、雷を求め続け今なお雨を降らせる龍が。
(2021/04/23)
好敵手である人間を組み伏せている中。
天から降り注ぎ始める雨に気付いたのはいつからだったか。
「お前が降らせているのか――」
降りしきる雨音により睡眠を邪魔されたのか。
いつの間にか目を覚ましていた人間は横たわったまま。
こちらを振り向きもせずに問いかけてきた。
「……管轄外だ」
「ならば雨を降らせている管轄の神とやらを教えろ、不快だ」
「寝台の上で、他神の名を口にする気か貴様は」
他の存在を気にかけるなど無粋の極みではないのか。
「……もっとも、この地にそのような存在は居はしないが」
「全ては偶然であると?」
それにしては頻度が高いものだと疑問視する人間の言葉に。
確かに、偶発的なものにしては他意がありそうな気がしてくるが。
この地に天候に干渉できるほど力を持つものなど存在はしない。
仮にいたとするなら、それは何のために雨を降らす。
雨ばかりを降らし何になるのかと思考していれば。
ふと、思いつくものがあった。
「あるいは、雷を求める龍が降らせているのかもしれないな」
「くはッ、随分と迷惑な龍がいたものだ」
冗談だと受け取り、また微睡みへと人間は戻っていった。
その体には龍がいる、雷を求め続け今なお雨を降らせる龍が。
(2021/04/23)