小説
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好敵手と認める神と交わった夜。
地面を叩く雨によって目覚めることが多くなった。
まだ日さえ昇らぬ暗闇の中、雨音だけが耳に届き続けた。
「お前が降らせているのか、雷神」
遠き北欧の天上にある神の館とは違う、見慣れた造りの城にて。
戦った後の疲労とはまた違う怠さが残る体を起こそうとは思わず。
ただ、そこにいるだろう神へと向かって問いかけた。
雨音はすれども雷鳴は聞こえず。
その事が少しばかり惜しかった。
「……管轄外だ」
「ならば雨を降らせている管轄の神とやらを教えろ、不快だ」
「寝台の上で、他神の名を口にする気か貴様は」
たとえ不快さ故であろうと許されざる行いだと。
僅かに怒気をはらんだ声色で紡ぐ神に対し舌打ちをしたくなった。
神の感性とはわからないものが多い。
「……もっとも、この地にそのような存在は居はしないが」
「全ては偶然であると?」
交わった夜にのみ降る雨など他意を感じるが。
存在しないのであればやはり偶然の類か。
しかし、それにしても頻度が多くはないかと神へと問えば。
考え込んだように黙った相手から、やや遅れて返答がきた。
「あるいは、雷を求める龍が降らせているのかもしれないな」
「くはッ、随分と迷惑な龍がいたものだ」
戦乙女が騎乗する天馬は見たことがあるが。
龍などこれまで一度たりとも目にした覚えはない。
それも雷を好む龍など冗談にしても馬鹿々々しい。
話は終いだと打ち切り、いまだ降りしきる雨音を無視し目を閉じた。
雨音は響く
雷鳴を伴わぬ雨など不快なり。
end
(2021/04/22)
地面を叩く雨によって目覚めることが多くなった。
まだ日さえ昇らぬ暗闇の中、雨音だけが耳に届き続けた。
「お前が降らせているのか、雷神」
遠き北欧の天上にある神の館とは違う、見慣れた造りの城にて。
戦った後の疲労とはまた違う怠さが残る体を起こそうとは思わず。
ただ、そこにいるだろう神へと向かって問いかけた。
雨音はすれども雷鳴は聞こえず。
その事が少しばかり惜しかった。
「……管轄外だ」
「ならば雨を降らせている管轄の神とやらを教えろ、不快だ」
「寝台の上で、他神の名を口にする気か貴様は」
たとえ不快さ故であろうと許されざる行いだと。
僅かに怒気をはらんだ声色で紡ぐ神に対し舌打ちをしたくなった。
神の感性とはわからないものが多い。
「……もっとも、この地にそのような存在は居はしないが」
「全ては偶然であると?」
交わった夜にのみ降る雨など他意を感じるが。
存在しないのであればやはり偶然の類か。
しかし、それにしても頻度が多くはないかと神へと問えば。
考え込んだように黙った相手から、やや遅れて返答がきた。
「あるいは、雷を求める龍が降らせているのかもしれないな」
「くはッ、随分と迷惑な龍がいたものだ」
戦乙女が騎乗する天馬は見たことがあるが。
龍などこれまで一度たりとも目にした覚えはない。
それも雷を好む龍など冗談にしても馬鹿々々しい。
話は終いだと打ち切り、いまだ降りしきる雨音を無視し目を閉じた。
雨音は響く
雷鳴を伴わぬ雨など不快なり。
end
(2021/04/22)