萌語り

◆夜目欲目天蓋の内


夜目がきく方のトール神とか。
ほぼ明かりが無いような部屋でもはっきりと見えていて。
人の子がそれほど見えないと分かっていないままに求めて拗れる話。
名目上が、身体強化に必要な儀式的な扱いだったせいで。
どれだけ大切に思って丁寧に抱こうが一切相手に意図が伝わってない。

呂布の方は割り切ってるので暗闇だろうと何だろうとどうでもいい。
むしろ普通であれば萎えるであろうに、よくこんな方法を実行できるものだと感心する始末。
悲しいとかそういう感情はなく。戦う為とはいえ、他に方法がないものかと思わなくもないが。
雷神がそこまでして戦う為の儀式を執り行うのであれば。こちらも協力的であるべきだと覚悟を決めてる。
全くもってトール神の好意がミリも伝わってない。

戦う為に行ってる儀式だと思ってるので、神に協力的な人の子。
ただ、その協力方法が、萎えさせないようにとの気遣いから。
極力声を出さない事だったり、相手の体に縋らない事だったりするので。
トール神からしてみれば不満要素満載だと知らない。

はじめの数回はトール神が時間を惜しんだせいで部屋の明かりをつけていなかったが。
それ以降は呂布の方からの申し出によって部屋の明かりを消していたとか。
けれど、夜目がきくとはいえ明るい所の方がより鮮明に見えるのには変わりなく。
ある日、部屋の明かりをつけた寝室で呂布を抱きたくなったトール神とか。
今までそちらの願いを聞いていたのだから、たまにはこちらの願いを聞けと神は言い。
神の言い分の意味が分からない人の子。

人並み以上に夜目がきくので部屋に明かりをともす時間すら邪魔で省いたトール神。
できる限り抱く相手を認識しないよう部屋の明かりをつけないのかと判断した呂布。
はたしてこの場合、勘違いした人の子の方が悪いのか否か。

毎回、明かりを消せと言う人間の願いを聞き入れ。
意識がしっかりしてる内は素直ではない相手に合わせていたトール神。
人間とは羞恥心が強いものなのかと、トンチンカンな風に受け止めてたとか。
もっとも、そんな羞恥心すらも蕩けさせる過程もまた一興とは思いながら。

その後、初めから夜目がきいてて明るかろうが暗かろうがあまり関係なかったと知り。
さらに今までの気遣いからの行動が羞恥心ゆえと勘違いされていたと理解し。
釈然としない面持ちになる呂布。

先に言えと言うのもおかしく。
何の為にこちらが気遣ったと思っていると苦言するのもどこか違い。
互いに誤解していたことは分かったゆえ、何一つとして問題はなくなったが。
されど、今更に明るい室内でヤるのに抵抗感があるのは何故なのか。
声も、縋りつくことも、もう耐えなくていいと雷神は言うが。
何かが違う気がするのは気のせいか。

問題はそこではないという答えにたどり着けずモヤモヤする呂布。
要するに、本人無自覚だが羞恥心がないわけではなく。
明るい所でヤるのも、声を出すのも、相手に縋るのも。
そんな積極的にしたい事ではなかったというオチ。


(2021/03/02)
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