萌語り

◆自覚したが最後


周囲への塩対応とは打って変わって、呂布にだけ甘いトール神が見たい。
神様らしく傲慢な所はあるけど、無自覚に甘々なのを。
前までのトール神を知ってる神々から見たら、誰だアレ?となるのを。
呂布の方は、その状態の雷神がデフォルトなので気付かない。
神にしては話がわかる奴で付き合いやすいと思ってる。とんだ勘違い。

まだ呂布に対して手を出してなかったトール神。
たぶんその内に、一緒に酒でも飲んでる時に自然な流れで呂布を抱いてる。
酔っているのか?とは思ったが、好きにしろと雷神に体を許す呂布。
不快さが浮かばなかったゆえに許した。
けれど、雷神が抱こうとしてくる意味が分からず。
女の方がよほどいいだろうにと、若干の呆れすら浮かんでいた。
なお、呂布より酒を飲んでいたがトール神は素面だったりする。

トール神と酒盛りをした後の習慣と化そうと。
それが雷神からの愛ゆえにとは気づかない呂布。
神とはその様なものだろうと、端から割り切ってる。
真に迫るような熱を帯びた言葉をどれだけ注がれようと聞き流し。
これでよく今まで勘違いをされなかったものだと逆に心配する始末。
珍しく呂布の方が悪いパターン。

呂布を気遣って、抱くにしても手加減してるトール神。
本当はもう少ししたいが、それ以上に心満たされているので止められる。
まさか呂布が、神というのは誰に対してもそうするのだろう?と思ってるとは知らない。
知ったが最後、手加減抜きで呂布の全てを奪おうとする。
誰に対してもとは笑わせるものだ、我が好敵手、呂布奉先よ。
貴様以外を求めたことはないというのに、と手加減抜きで抱き始め。

今までの事が児戯にすら思える行為を前に頭が混乱する呂布。
雷神が自分だけを求めていたと、頭の中で理解した瞬間。
ずっと聞き流していた雷神からの言葉の数々を思い出し。
何に対しての羞恥心かすら分からないままに妙に顔が熱くなる。
ただひたすらに訳の分からない気持ちが荒れ狂い。
その間にも雷神からの行為は激しさを増し。
分かったから止まれ!と怒鳴ろうとするが、まともに声が紡げるわけもなく。
雷神の気が済むまで手加減抜きで抱き潰される。

二度目のニブルヘルが腹上死とか笑えないことになりかけ。
前までは相当に気遣って抱いていたのかと実感する呂布。
状況を整理するなら、我が悪かったのだろうなと、そこは認める。
認めはするが、どう言ったものかと、擦れ過ぎた声を前に考える。

手加減なく呂布を求め。
気付けば危うい状態にまで追い込んでいたトール神。
その後甲斐甲斐しく世話をするが、気分は沈んでいる。
人である呂布に無理をさせ、好敵手の尊厳を無視して貪り。
言いようのない悲しさを押しのけ心の底から浮かんだのは。
神としての支配欲が満たされる感覚。
所詮、神は人のように愛することなど出来はしない。

落ち込んだ様子のトール神に対し。
まだどこもかしこも痛む体で起き上がり手を伸ばす呂布。
我が悪かったとかすれた声で紡ぎ、トール神の頬へと手を添える。
武力以外を求められたことなどない生前であり。
己すら武だけを求め続けていた生涯だった。
我自身を求められたことなど終ぞ無いせいで分からず悪かったと。

人のように愛せないことを自覚してしまったトール神。
呂布からの言葉に、理解されていなかった悲しみは癒えども。
好敵手としての呂布を尊重したい気持ちはあれども。
目の前の人間を自分の所有物としたい欲が浮かぶ。

――という感じの、若干すれ違ってる神様と人間の話。
呂布に対して無自覚に甘くても、結局は神様だったトール神。
相手の全てを受け止め許していたこと自体がすでに答えだった呂布。
互いに自覚した感情の内容が違い過ぎる。


(2020/12/20)
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