断片話

◆双方の合意


「我は、お前だから許した」

他の誰でもなく、唯一無二の好敵手である、お前だからだと。
強く、ともすれば睨みつけるように鋭い眼差しで、雷神トールへと呂布は告げた。
何処までも折れることなく触れることを許す己が好敵手を前に、トールは嬉しげに目を細めた。

「……そうか」

無粋にも手折ろうとしている神を許すと、確かに呂布は告げた。
自分だからこそ、目の前の相手は全てを受け止める気でいる。

触れれば壊れるほど脆くはない相手と分かっていながら。
それでも、雷神トールは相手の体へと優しく触れ始めた。

侮辱しているわけではない。
ただ、いとおしく大切な者に手荒に触れることなど出来なかっただけだ。


(2020/11/10)
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